南ア北部 双児山(2649m)、駒津峰(2740m)、甲斐駒ヶ岳(2967m)、三ツ頭(2580m)、烏帽子岳(2594m)、熊穴沢ノ頭(2610m) 2013年8月16〜17日  カウント:画像読み出し不能

所要時間

8/16 5:42 駐車場−−5:49 戸台大橋 6:10−(バス)−6:49 北沢峠 7:03−−8:36 双児山−−9:08 駒津峰−−10:01 甲斐駒ヶ岳(休憩) 10:53−−11:40 6合目石室 11:44−−11:46 水場入口−−11:52 水場 12:20−−12:29 水場入口−−12:31 6合目石室(宿泊)

8/17 5:13 6合目石室−−5:44 三ツ頭−−5:56 烏帽子岳−−6:06 縦走路−−6:30 熊穴沢ノ頭−−6:47 中ノ川乗越 6:54−−8:13 戸台川(休憩) 8:33−−8:41 角兵衛沢出合−−9:08 赤い鉄骨の堰堤−−9:21 堰堤−−9:26 発電用取水堰堤−−9:52 堰堤−−10:04 戸台川登山口−−10:15 駐車場

場所長野県伊那市(旧長谷村)
山梨県北杜市
山梨県南アルプス市
年月日2013年8月16〜17日 避難小屋1泊
天候1日目:晴後雨 2日目:曇後晴
山行種類避難小屋泊一般登山
交通手段マイカー
駐車場戸台川登山口もしくはその下流に駐車場あり
登山道の有無あり
籔の有無無し。ただし烏帽子岳直下はハイマツがはみ出している
危険個所の有無大きな危険は無し
山頂の展望双児山、熊穴沢ノ頭以外はどこも大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
無し
コメント戸台川河原に駐車し戸台大橋からバスで北沢峠へ上がり甲斐駒ヶ岳へ。初日は6合目石室(避難小屋)で宿泊。翌日、烏帽子岳に立ち寄り、中ノ川乗越から熊の穴沢から戸台川に下り、あとは延々と河原歩き。6合目石室の水場は枯れる寸前で、たぶん1週間後には使えなくなっていると思う。戸台川の水量も過去最低で秋の水量より少なかった。避難小屋の同宿者は2名で両者とも戸台発で鋸岳を越えてきた。お盆でもっと人がいるかと思ったがまさか3名だけとは。黒戸尾根日帰りは10名くらいいた


ルート図(クリックで拡大)


戸台大橋近くの駐車場に駐車。キャンパー多数 戸台大橋でバスに乗る
北沢峠 長衛荘で給水
広河原方面バス乗場 甲斐駒への登山道を進む
シラビソ樹林が続く 一時的に森林限界
双児山山頂。ギリギリ森林限界以下
双児山から見た甲斐駒ヶ岳、駒津峰
双児山北側から見た南側の展望
駒津峰への登り。森林限界を超える 駒津峰山頂。背景は甲斐駒
駒津峰から見た東〜南〜西の展望(クリックで拡大)
駒津峰北側から見た駒津峰 駒津峰北側から見た戸台川と鋸岳
鞍部手前より見上げる甲斐駒と摩利支天
鞍部より振り返る駒津峰 六万石付近
直登コースと巻道分岐を直登コースへ 見上げる甲斐駒山頂
振り返る もうすぐ山頂
甲斐駒山頂の祠 甲斐駒山頂標識
1等三角点。なぜか黒い石 登ってきた尾根
甲斐駒から見た仙丈ヶ岳
甲斐駒から見た摩利支天。左のピークが黒戸尾根分岐
甲斐駒から見た鋸岳 鋸岳へと進む。道は細くなる
稜線にガスがかかり始める 坊主山へ続く尾根。ハイマツの海
鎖場直上 下から鎖場を見る
まだ森林限界 小屋西側の砂地
六合目石室(避難小屋) 六合目石室(避難小屋)
六合目石室(避難小屋)の内部。キャパは10人程度。石垣の継目はコンクリートで埋められている。
水汲みに出発 西に進んで開けた稜線に出る。避難小屋の案内標識無し
東にUターンするように鋭角に下る。水場の標識無し もったいないがガンガン下る
水場の沢。ほとんど枯れている 枯れ木を滴る個所で水を汲めた
水場から上を見上げる 小屋前から見た仙丈ヶ岳
小屋前から見た中央アルプス
小屋付近から見た三ツ頭、烏帽子岳
旧丹渓山荘へ下るルートは廃道化 樹林の稜線を進む
稜線南は切れ落ちている 登山道は北を巻く個所も多い
三ツ頭と烏帽子岳
八ヶ岳 ピークをいくつか越える
たぶんミネウスユキソウ タカネビランジ。たくさん咲いていた
ミヤマアズマギク(らしい) ヒメシャジンだと思う
たぶんウメバチソウ 奥秩父
三ツ頭から見た甲斐駒 三ツ頭山頂
三ツ頭から見た東〜南〜西の展望
三ツ頭から見た北アルプス
三ツ頭から見た八ヶ岳 三ツ頭北側の烏帽子岳分岐。新標識が増えていた
烏帽子岳へ向かう 道あり
烏帽子岳直下はハイマツがうるさい 烏帽子岳山頂。標識が新設されていた
烏帽子岳から見た鋸岳 烏帽子岳から見た戸台川
烏帽子岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
烏帽子岳から見た北アルプス(クリックで拡大)
分岐に戻り鋸岳方面へ 2530m鞍部北側を巻く
熊穴沢ノ頭への登り返し 嫦娥岳へ続く尾根。下りはかなり難しい
熊穴沢ノ頭山頂。樹林で展望なし 中ノ川乗越を見下ろす
中ノ川乗越東側のテント場 中ノ川乗越(鞍部)
中ノ川乗越北側のテント場 中ノ川乗越から見た第二高点への登り
崖の基部を登っていく
中ノ川乗越から東を見る 中ノ川乗越から熊の穴沢を下る。
歩きやすい場所を適当に。
しばらく落石の堆積が続き歩きにくい 1か所だけタカネビランジがまとまって咲いていた
ガレ末端 樹林帯は歩きやすい
こんな道が続けばいいが たまに落石帯あり
かなり下った 増水時のみ水が流れる
戸台川が見えてきた 最後の下り
登ってくる男女2人組 戸台川。今まで見た中で一番水量少なし
熊の穴沢入口。標識無しなので初めての人は分からないだろう 嫦娥岳
戸台川左岸を下る 角兵衛沢出合
角兵衛沢をこれから登るパーティー まだ左岸を下る
熊の穴沢と角兵衛沢 新たな崩壊個所も
古い登山道(廃林道)もたまに残っている 最上流の堰堤上流
最上流の堰堤。赤い鉄骨に石が詰まった構造 日影が涼しい
2つ目の堰堤上流。水は完全に伏流化 2つ目の堰堤右岸の階段を越える
林道終点。昔はここまで車が入れたのだが 2つ目の堰堤を下流側より
発電用取水堰。えらく水が少なかった 右岸を進む。例年よりかなり水が少ない
簡単に渡れる 3つ目の堰堤上流。この先で完全に伏流化
3つ目の堰堤。右岸側に乗り越える道あり しばし林道歩き
戸台川登山口 戸台川登山口。えらく警告看板が多い
車2台+バイク1台のみ 駐車場西端より。えらく広い
戸台川右岸沿いの通行止めの車道(車止め) 通行止めだが車が走れるレベルの道のまま
西側の車止め 駐車場到着
駐車場前の戸台川。水浴びに最適


 お盆休み後半は甲斐駒へ行くことに。本当は聖岳〜光岳の周遊を考えていたが、下界での休養中に左膝を負傷してしまい階段の上り下りで痛みが走る状態だったため、3日間の休養をとって山に入る日程も2日に短縮で近場に変更。バスで北沢峠に上がって鋸岳方面へ進み6合目石室避難小屋で宿泊。翌日、熊の穴沢から戸台川に下山するか、鋸岳を越えて角兵衛沢から下るかは当日の状況で決めることにした。今回は山の上で涼むことが主目的であり、長い戸台川の河原歩きで日に焼かれるのはイヤだという考えがあり、鋸岳に登ると河原歩きがクソ暑い時間帯にならざるを得ないのが欠点だ。2年前に鋸岳は縦走しているし。また、避難小屋の水場が枯れている心配もあった。その場合、1日目に熊の穴沢から戸台川まで下って幕営となろう。今年は雨量が少ないので水場の状況は分からない。

 出発地点は戸台大橋のすぐ上流側の河原。知らなかったがここにも駐車場がある。ただし、登山者用駐車場ではなく川遊びの家族連れが利用するためのものらしい。でも戸台大橋に近いのでバスを利用する場合は好都合。なお、戸台大橋からも北沢峠行きのバスに乗車可能だ。ただし、始発便の最初の数台は助手席まで満席なので途中で乗客を乗せることは不可能で、満員が解消される台数まで待つ必要があり出発が少々遅れる。でもその時間は15分程度であろう。

 本日も平日扱いで高速料金は半額にならないため、通勤割引が効く韮崎で降りてその後は一般道を走行。長野に入ってからは雷が激しく、富士見では大粒の雨が落ちてきた。茅野に入ると雨は止んだが上空では稲光が頻繁に発生。この日は諏訪湖花火大会だったが、この後に猛烈な雷雨がやってきて開始から30分で中止になったそうだ。それどころか大雨で中央道は通行止め、JRは運航見合わせで大混乱だったようだ。高遠に入ると光は見えるが雷鳴は聞こえず雨も落ちていなかった。駐車場はキャンプのテントがいくつかあった。

 翌朝は晴れ。軽く飯を食ってザックを担いで戸台大橋へ。北沢峠までの料金は\950+荷物料金\200。予想通り始発から数台は満席で乗車できなかったが15〜20分後のバスに乗ることができた。残念ながら天気はいいのに空気の透明度が悪く、中央アルプスもほとんど見えなかったので北アルプスは影も形もなかった。

 北沢峠はいつものように大賑わい。長衛荘で水を補給して残りの朝飯を食って甲斐駒方面へ出発。標高2000mなので充分に涼しい。既に大多数の登山者が出た後なので登山道に人の姿はない。そのうちに元気な若者2人組に追い越されて再び視界に登山者はいなくなった。シラビソ樹林を登り続け高度が上がり双児山近くでハイマツが登場、しかし双児山山頂は森林限界ギリギリで西側は樹林で展望なし、甲斐駒方向はハイマツで展望あり。

 一度鞍部に下って登り返すとすぐに森林下界を突破、ハイマツの中に付けられた道をジグザグに登っていく。振り返ると先週登った北岳、間ノ岳の姿。一番大きいのは北沢峠を挟んで対峙する仙丈ヶ岳。この好天だから大賑わいだろう。

 きつい斜面を登りきって緩い尾根に乗ると駒津峰山頂。仙水峠からの登山者も加わって双児山よりずっと賑わっていた。ここは低いハイマツだけなので展望は360度、甲斐駒は目の前に大迫力で聳える。ここの標高は2700mを越えるので山頂までもう少しだ。

 北に細長い稜線を歩き、少しだけ下って鞍部へ。ここは巨岩の六方石が鎮座している。甲斐駒向けて少し登ると直登ルートと巻道ルートが分岐、大半の人は足にやさしい巻道ルートに入るが、私は時間が短くて済む直登ルートを進む。ここは大きな花崗岩をよじ登るような個所もあり歩きやすいとは言えないが、危険なレベルでもない。ただ、岩の上を進む個所が多く足跡が残らないので、慣れない人ではルートの見極めが難しいかもしれない。まあ、安全そうな個所を登ればいいだけだが。

 出だしからしばらくが岩をよじ登ったりする区間が続くが、傾斜が緩んで尾根に出ると登山道らしくなって歩きやすくなる。再び傾斜が出ると大きな岩を回り込んで花崗岩が風化した白い砂地を登っていく。ルートが分散するようだがここまで来るとヤバい個所は無いのでどこでもOK状態。

 上部の巨岩地帯に入ると甲斐駒山頂に到着。数人が休憩中。甲府盆地方向は既にガスが上がり始めて展望は無く、北岳から仙丈ヶ岳方向が見えている。先週の北岳は真昼間でもガスが上がってこなかったので、先週よりも大気の状態が不安定らしい。ガスった黒戸尾根からは次々と軽装の登山者がやってくる。人数は北沢峠発の人と同じくらいいたのではなかろうか。私が休憩中に黒戸尾根からやってきた最初の登山者に話を聞いたら登山口から4時間45分! トレランでもないのに滅茶苦茶早い。その次の人は5時間半とのこと。日帰りを狙う人はそれなりの健脚ばかりのようだ(当たり前か)。

 ガスは徐々に上がってきて周囲の展望が無くなってくる。まだ雨が降る気配はないが、昨日は諏訪周辺で大雨だったし、今日は降らない保証はない。あまり早く避難小屋に入ってもやることがないが雨に降られたらイヤなので出発。鋸岳方向の案内標識は「難路」と書かれているが、鋸岳第二高点以降に進まなければ難路ではない。

 久しぶりのルートで出だしからちょっと迷ったがすぐに正しい道に復帰、これまでは超1級の登山道だったがこの先は2級にグレードダウン、両側からハイマツがはみ出している。また、尾根上には巨岩が林立し、北を巻いたり南を巻いたりルートが分散して存在する場所もあり、岩の上で行き詰ることも。この辺は周囲の状況を見て臨機応変に歩けばいい。

 やがて右手にガスの中から顕著な尾根が登場、坊主山へ続く尾根だ。ガスのため坊主山山頂は見えないが、以前と同様に緑の絨毯のようなハイマツの海。稜線付近は低いハイマツだからまだいいが、下ると背丈を越える幹が太い立ったハイマツに変わるので厄介だ。下りでは地面に足が付かなかったなぁ。登りはハイマツを掻き分けるので腕が異様に疲れた記憶がある。もう行くことはないかな。

 なおも標高を落とし、 2645m肩の下りで鎖が登場する。以前は古びた針金だったが、少なくとも2年前には鎖に置き換わっていた。登りなら鎖に頼らず通過できると思うが、下りでは安全のためには鎖があった方がいい場所だ。鋸岳まで縦走しないで熊の穴沢から下山する場合は、ここが唯一の鎖場となる。

 まだ森林限界以上だがシラビソや唐松の背丈が少しずつ高くなっていく。6合目石室(避難小屋)の茶色い屋根が稜線南側に見えたところで登山道は左(南)に曲がったが、前回以前の記憶では登山道は稜線上をまっすぐ進んで小屋西側の砂礫地に出て、そこからUターンするように鋭角に曲がって小屋に達したような。それとも以前からこの道もあったのだろうか? 尾根を直進する道もちゃんとあるはずだ。なお、小屋に下る道の入口には避難小屋の案内標識は無いし、避難小屋西側の砂礫地から避難小屋に入る道にも標識は無い。また、水場入口にも標識は無く、あらかじめ調べてからここに来ないと通過してしまう確率が高い。

 小屋のすぐ裏手に下りて表に回り、東側にある入口のドアを開けるとまだ無人。まずは水場に向かう。水が得られればここで宿泊し、水が涸れていれば戸台川まで下る予定なのだ。過去に水場が涸れていた経験は皆無だが、今年は農鳥小屋の水場が涸れるくらいだからなぁ。アタックザックに装備を変えて出発。砂礫地から折り返すようにハイマツの間から東に下る踏跡を辿る。すぐに急な下りが始まって、シラビソ樹林の中を標高差100m近く下ると水場の小さな沢の源頭に到着。水溜りがあるが水は流れていない状況。でも耳を済ませると水が流れ落ちる音が。よ〜く探すと岩の重なった内部で水が流れているのが分かった。しかしそこは狭くて手もペットボトルも入らない場所。水源の沢で他に水が流れている場所は無し。水量が減って伏流化してしまったようだ。しかし、岩に挟まった枯れ木を伝わって3,4筋の水滴が滴り落ちていて、時間はかかるがこれを汲むことは可能だ。口が広いコップを持ってきたのでこれで水を受け止める。約300ccのコップがいっぱいになるのに2分程度かかったが、見た目よりは早かった。計2リットルほど補給し、あとは濡れタオルで体を拭いてタオルの洗濯に使用。この水量だとまとまった雨が降らないともう1週間もすると完全に水が涸れてしまうかも。

 小屋に戻るとやることは無くシュラフに潜って昼寝。雨は降っていないが時々雷鳴が聞こえ、今日は雨が降るかも。そのうちに単独の若者がやってきた。名古屋に住んでいて、今日は戸台川を出て鋸岳を超えてここまでやってきて、明日は甲斐駒に登って北沢峠からバスで帰るようだ。そのうちに雨が降り出し、止んでから単独男性が到着。若者同様に戸台川を出て鋸岳を縦走してきたとのこと。本日の宿泊はこの3人だけ、お盆のさなかでもっと賑わうと思っていたが思いのほか少なく静かに過ごせた。夜半には雨は止んで月と星空が見えていた。

 翌朝、起床は私が一番だったが、若者は朝飯を食わずに小屋の出発は1番だった。たぶん甲斐駒山頂で飯を食うのだろう。上空の高いところに薄い雲が出ているが、今日の天気予報は晴れ時々曇り、雷雨の心配は無しとのことで昨日より好天が期待できそうだ。昨日は見えなかった中央アルプスもくっきりと見えている。避難小屋を5時過ぎに出発。昨日の雨で藪が濡れていると思われたため、出だしはゴアのズボンを着用。

 小屋より西側の稜線は、稜線南側がガレて切れ落ちた場所が多くなり、その縁を歩いたり北を巻いたりする。意外にも高山植物が多く見られるようになり、ウスユキソウやタカネビランジが多かった。三ッ頭山頂に出ると樹林が切れて大展望。今日は北アルプスも姿を見せていた。昨日の甲斐駒で見たかったなぁ。

 今回は烏帽子岳に立ち寄ることに。少なくとも昨年には大岩山から烏帽子岳間に登山道が整備されていて縦走者のレポートを目にするようになっていて、どのくらいのグレードの道なのか確認したかった。烏帽子岳分岐には新しい案内標識が立っていて「烏帽子岳 0.4h」となっている。ここには大岩山の文字は無い。明瞭な踏跡を辿って烏帽子岳直下に来ると、前回登った時と変わらず両側からハイマツがはみ出して半ズボンではちと厳しい道は変わっていなかった。ハイマツの斜面を登りきると大きな岩の烏帽子岳山頂。以前は標識皆無だったが今は山頂標識が立っていて、東向きは「大岩山 3h」だった。やっぱちゃんと道があるようだ。涼しくなったら歩いてみたい尾根である。ここも360度の大展望が楽しめる場所だ。槍穂から立山まで見ることができ大満足。

 分岐に戻ってザックを回収、西に向かう。鞍部北側を巻いて熊穴沢ノ頭へ登り返し。その途中で明瞭な巻道が分岐するが、これは誤った道で途中でフェードアウトするのは2年前に経験済み。稜線に上がる薄い道が正解でピンクリボンもこちらに付いている。シラビソ樹林を登りきって傾斜が緩むと嫦娥岳へ続く尾根の分岐。ここを下るのも面白そうなのだが、何せ難解な尾根で下りで正解ルートをトレースするのは至難の業なのはDJF氏の記録で証明済みなのでパス。いつかやるとしたら登りで挑戦だ。熊穴沢ノ頭山頂は樹林の中なので展望は無い。

 平坦な山頂部を通過してからは中ノ川乗越まで下っていく。乗越の直前で小さなテント場あり。鞍部の中ノ川乗越の北側にもテント場がある。ただしここは水は無いので担ぎ上げる必要がある。ここで思案。鋸岳を縦走して角兵衛沢を下るか、それともこのまま熊ノ穴沢を下るか。涼しい時期でテントを背負っていなければ文句なしに鋸岳に向かうのだが、鋸を越えると時間がかかって長い戸台川の河原歩きが日差しが暑い時刻になってしまうのが一番イヤだった。また、小ギャップの登り返しの鎖は1箇所だけオーバーハング気味で腕力で超える箇所があり、テントの重みがきついのも難点だった。ま、2年前に縦走しているので今回はパスでよかろうと、熊の穴沢から下山に決定。結局はこの判断のおかげで中央道のUターン渋滞に巻き込まれずに済んだのだった。

 中ノ川乗越からしばらくは大きな落石が堆積した広大な谷間を下っていく。下界からここを見上げると岩雪崩でも発生しそうな場所に見えるが、実際にはそこまで石は不安定ではなく、個々の石は動いても全体が同時に動くことは無い。でも足を置いた石が不安定ではコケると周囲の尖った石で怪我をするので、慎重に足を進める必要がある。不用意に歩いて下手に手を付くと中倉山のように6針縫う怪我をするなんてこともありうる。今回は速度を落として慎重に下っていった。小さな石よりも大きな石の方が座りがいいように感じた。ガラガラの落石堆積帯が続く限りはその上を適当に下っていくのが正解ルート。石の上なので踏跡は残らないので他人がどんなルートを歩いているのか分からないが、とにかく広い谷の真ん中を歩きやすいように歩いていけば問題なし。最後は大粒の砂利の道になり、細かいジグザグを切って下っていく。ここでやっとルートが明瞭になる。

 砂利が終わると樹林帯に入って足元は土の区間が多くなり格段に歩きやすい。以前より目印が減ったようにも思えるが今でも点々とリボンが設置されているし、踏跡はそれなりの濃さなので暗闇でもない限り迷うようなことはないと思う。もし迷ってもこのまま谷地形の中を下っていけば危険箇所も無く戸台川に出られるので、気楽に歩けばいい。谷の東側は絶壁が続いて嫦娥岳へ取り付けそうな場所は見当たらない。しかしこの時間はこの壁が太陽を遮ってくれるので涼しくて助かる。

 戸台川が近づくと大きな石が集まった水が流れた形跡が登場、東側の谷は水が流れているはずだが今回は涸れていた。西側の谷は水が流れているのを見たことがない。やっと目の前が明るくなると樹林を飛び出して戸台川の流れ。なんと目の前にはこれから登って行く男女のパーティー。ここは初めてのようで、標識が無いここが熊の穴沢なのか確信が持てなかったところを私が下ってきて助かったらしい。これから鋸岳縦走とのこと。今日は雷の心配が無いから時間的にも大丈夫かな。

 戸台川の水量は今まで見た中で一番少なく、10月に歩いたときよりも減っていた。水が少ないので渡渉は簡単。対岸で少々休憩。すると下流方向に男女ペアが歩いて行った。おや、丹渓新道を下ってきたようだ。いまどき珍しいルート取りだと思ったら、このまま戸台川を下らずに角兵衛沢に入っていった。そうか、角兵衛沢に入る場合、戸台川を遡上するよりもバスで歌宿まで上がり、丹渓新道を下った方が体力的にも時間的にも楽ができるのか。こんな方法は考えたことがなかった。

 戸台川沿いは右岸にもケルンが見られるが、もう流失して痕跡も残っていない過去の林道跡に従って左岸を歩いた。一応、今でも正式ルートは左岸らしく頻繁にリボンを見かける。ただし、一部区間を除いて林道は削れて全体が河原となり、どこを歩いても同じようだが。角兵衛沢出合には標識が立っているが何で熊の穴沢には標識が無いのか不明だ。

 以降も河原歩きが続くが、まだ時間帯が早く気温が上がっていないので最初は割と涼しく歩けた。ほとんど河原に埋もれた最初の堰堤を過ぎると流れは伏流化し、河原は完全に干上がっていた。この情景を見るのは初めて。次の大きな堰堤手前も全く流れはない。左岸側の遊歩道?から堰堤を超えると崩壊した林道終点。次の発電取水用堰堤まではそこそこ林道が残っているが、発電取水用堰堤から200mくらい進んでから次の堰堤までは林道はほぼ100%消失しており、今度は林道があった右岸側を歩くようになる。ここもただの河原に変わり果てているので左岸側を歩いても問題ないだろうが。右岸側は1箇所だけ岸に流れが接近した箇所の傾斜がきつく高巻きしているが、上がるのが面倒なので私は飛び石で左岸に渡渉してそのまま河原を歩き、適当な場所で右岸に戻った。その後は右岸を歩く。

 次の堰堤手前で広い河原に変わって水の流れは途中で消える。2年前に流れていた場所も流れの跡は残るがカラカラに乾いていた。この堰堤も右岸から乗り越える。乗り越えているのは登山道ではなく林道だが、上流側に下った場所で削り取られて車の通行は不能である。よって、今は車はここまでしか入れない。

 この堰堤より下流は戸台駐車場付近まで林道は健在だ。ただし、駐車場付近は大雨で道が消失、石がゴロゴロした河原を適当に走行する必要があり、車高が高い車でないと通過は無理だろう。まあ、生きている林道区間は歩いても15分くらいなので無理して車で入ってもあまりお得感はない。

 戸台駐車場は車が2台にバイク1台と寂しい状況。お盆休みは鋸岳よりも3000m峰が人気なのだろう。登山ポストが設置された無人の小屋の前には警告の看板が多数。鋸岳はそれなりにリスクがある山だから仕方ないが、単独行はNGというのはいかがなものか。パーティーの方がいざという時に連絡方法が確保できる確率が高いのでリスクが低いのは間違いないが、単独だからこそ他人に頼らず全リスクを自分で背負う覚悟があり、入念な装備と天候等で行くか止めるかの判断がなされるわけであり、パーティーよりも慎重に行動/判断している(少なくとも私の周囲の単独行者はそうだ)。単独行は大きな成長に欠かせない要素だと思うので単独行はダメというのはちと・・・。

 私の車はもっと下流に置いてあるので駐車場はスルーして直進、上に向かう車道は歩かずに西に向かう車止めされた車道に足を踏み入れる。落石の危険があるので通行止めだそうだが、歩いてみると崩れた箇所は無く全線舗装され快適に歩けた。小黒川を渡る橋もまだ立派だ。西側のゲートを通過すれば駐車場到着。今日もキャンパーの姿が見られた。駐車場前に流れる戸台川で汗を洗い流し、軽く昼寝をしてから帰路についた。

 

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